俺様編集者に翻弄されています！
「へぇ、じゃあユーリ先生の今の担当って氷室なんだ」


　―――氷室なんだ。


　という口調から宮森と氷室は顔見知りなのだと悟った。けれど、氷室と知り合いなのかと尋ねるタイミングを逃してしまい、なんとなく心の中にモヤが残った。


「始めユーリ先生だって気づかなくて、実は前に会社で見かけたことあってね」


「えっ、そうだったんですか……」


　おそらくその時は、眼鏡にぼさぼさの髪を無理矢理束ねてジーンズにスニーカーにすっぴんだったに違いない。


　いつも気にならないと思っていたが、いざ人に見られていたと思うと羞恥で真っ赤になった。今にも加奈の“ほら見なさい！”という言葉が聞こえてきそうだった。



「前見かけた時と今日は印象が違うっていうか……ユーリ先生って実は綺麗な人だったんだって、あ、いい意味でね」


　確かに前と今では見かけもずいぶん違うと自分でも思う。

　悠里は綺麗と言われて悪い気はしなかった。そして、宮森はどんどん悠里の心の隙間に入り込もうとしてくるのがわかって、悠里は気持ちが張り詰めた。
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