俺様編集者に翻弄されています!
「ひ、氷室……さん?」

 見上げると、眉間に皺を寄せた氷室が宮森を睨みつけるように見据えていた。


「ああ、悪い、うちの作家が迷惑かけたな」


(ああ、この匂い……氷室さんの大人フレグランス……)


 氷室の匂いにうっとりしかけて、ますます頭の中が乱された。


「ふふ、やっぱり来たね。さっきからずっとこっち気にかけてたみたいだけど? 後藤先生についてなくていいの?」


 宮森は口元に小さな笑みを浮かべて氷室を見た。


「いいもなにもそんな義務はない。俺は俺で忙しい、こういうやつがいるからな。おい、行くぞ」


「は、はい……」


 氷室の冷たい一瞥が胸に痛い。

 けれど、悠里は一度醒めた酔いが再び回って言い訳を考えることもできなかった。


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