俺様編集者に翻弄されています!
「……なんだ、起きたのか?」


 氷室が横目でちらりと悠里を見た。普段なら初めて見る氷室の運転姿に、妄想も掻き立てられるところだが、今はそれどころではなかった。


「ひ、氷室……さん……あの、ぎもぢわるい、は、吐きそう」

 悠里は声を振り絞って氷室に訴えながら、口を手で押さえた。尋常じゃない事態に、氷室も珍しく慌てた表情に変わった。

「なっ……やめろ、それだけは勘弁してくれ」


「で、でも……うぅ」


「お前死んでも我慢しろ、ったく……調子に乗ってフルーツカクテルなんて飲むからだぞ」


(え……、宮森さんにジュースだって言われて飲んだのって……お酒だったの?)


 悠里はあまり酒を嗜む方ではなかった。カクテルとソフトドリンクの見分けさえつかない自分に情けなくなる。


 これが氷室と初めてのドライブだと思うと、切ない気持ちでいっぱいになった―――。
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