俺様編集者に翻弄されています!
(うぅ……なんだか氷室さんの表情が険しい……)


 氷室は悠里に全く目もくれず、思い詰めた表情で眼下に広がる夜景を見下ろしていた。


「あ、あの……今日はすみませんでした。とんだご迷惑を―――」


「お前、あの男と何話してた?」


「え……?」


 あの男―――。


 それはおそらく宮森のことだろう。少なくとも氷室は宮森のことを快く思っていないように感じた。悠里はこれ以上氷室の機嫌を損ねてはいけないと思い、頭の中で言葉をあれこれ考えた。


「えっと……」


「ふっ……男をたらし込むテクニックなんて、お前、どこで覚えてきたんだ?」


「た、たらし込む!? 宮森さんとは初めて会ったんですよ? そんなことするわけないじゃ―――」


 氷室の鋭利な視線が悠里を捉えると、思わず言葉が途切れてしまい、悠里は最後まで言葉を紡ぐことができなかった。

「氷室……さん?」


 名前を呼ぶも返事はない。氷室のその瞳は、紛れもない憤りに満ち溢れていた。
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