俺様編集者に翻弄されています!
「ひ……むろ、さん……やめて」


 やっとの思いで搾り出した悠里の声は掠れていた。


 名前を呼ぶと、氷室は小さく息を呑んで弾けさせるようにして身体を離した。


 見開かれた氷室の瞳には、恥ずかしくなるほど蕩けきった自分の姿が映し出されている。


「……悪い」


「え……?」


「こんなこと……するはずじゃなかった」


 氷室は切なげに眉を寄せて唇を噛んでいる。そしてソファに座りなおすと、額を手のひらで抑えるようにしてうなだれた。


「今日の俺はどうかしてる、怒鳴ったりしてすまない……」


「あ、あの……」


「今夜はもう遅い、泊まってけ……突き当りがゲストルームだから好きに使っていい」


 それだけ言うと、氷室は悠里から言葉をかけられるのをまるで避けるかのように、そのまま自室に入ってしまった。
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