俺様編集者に翻弄されています!
(馬鹿みたいだ……私)


 思わず口づけられたことが素直に嬉しくて、どうしようもなくその熱がもっと欲しくて抵抗することを忘れた。

 けれど、氷室の口から出たのはまるで後悔しているかのようなつぶやきだった。


 悠里は氷室との間にある温度差の違いに、どうしようもなく傷ついている自分が惨めで、目尻からひと雫の涙がこぼれた。



(もう考えるのやめよう……)


 悠里は手の甲で涙をぐいっと拭うと、一日の疲れがどっと押し寄せてゆっくり瞼を閉じた―――。


< 229 / 340 >

この作品をシェア

pagetop