俺様編集者に翻弄されています!
「違うなんて言わせないわよ、女の勘ってやつ」


「お前は立派な男だろ」


「あぁぁん、もう! それは言っちゃダメ」


 幼馴染がどうしてこうなってしまったのか、それは未だに謎だった。


 ナオママは巨体をくねくねさせながら氷室の話しに食いついた。


「あいつと俺は小説家と編集者だ。それ以外のなにものでもない」


「でも、キスしちゃったのね?」


「ぶっ!」


 またも唐突な図星に、氷室はラズベリージンをナオママの顔めがけて噴き出した。


 けれど、ナオママは何事もなかったかのように平然とおしぼりで顔を拭き、にこにこしながら氷室の恋の話しの続きを促した。


「お前、神経図太いな……」


「今更よぉ、美岬の噴いたものならいくらだって浴びちゃう! そんなことより、好きでもない男っていうのは美岬のことなの?」


「……別に、俺が勝手に感情任せに暴走しただけだ」


「どうして? そんな、美岬が理性失うなんて珍しいわね」


 ナオママは美岬のために出した新鮮なラズベリーをつまみながら首をかしげた。

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