俺様編集者に翻弄されています!
「それで、その美岬の独占欲は何が欲しいの?」


「え……?」


 ナオママに言われるまでその独占欲の矛先が、どこに向けられているかなんて考えもしなかった。


「まぁ、言わなくても私にはわかるけどね。だって、今の美岬は恋するオ・ト・コって感じじゃなぁい、あははは!」


「なっ……」


 恋する男―――冗談じゃない。


 公私混同は氷室が最も嫌悪する心の乱れだった。そんな心情が自分の中にあるのだと指摘されただけで、氷室は思わず動揺しそうになってしまい、新しく煙草を口に咥えることでごまかした。


「そんなはずないだろ、あいつにはいい仕事をしてもらいたいと思ってる。けど、そういう感情は邪心だ」


 悠里は今や本を出すたびベストセラーを産みだす貴重な存在だ。


 邪な感情で潰したくないと、そう思っていた矢先なぜかあの時、思わずキスどころか抱いてしまいそうになった。


 そしてどうしてそんなことをしてしまったのか、氷室にはわからなかった。
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