俺様編集者に翻弄されています!
「けど、あいつ……泣いてたな」


「え?」


「朝、ソファの上で熟睡してるあいつの目元に涙の跡があった」

 氷室の目に鮮明に蘇ってくる。あの朝の悠里の顔―――。

 あの夜の翌朝、悠里をリビングで見つけた氷室は、抱きかかえてゲストルームに連れて行くべきか考えたが、起こしてしまうかもしれないと思い、そのまま布団だけかけてやった。


 悠里の寝顔を覗き込んだその時、頬に涙が伝った跡が目に入った。


 それを見た氷室は罪悪感で居た堪れなくなって、悠里を起こすことなく会社に出社したのだった。



 ―――逃げるような真似して最低だ。


 その日は一日中仕事に追われて、ふとした瞬間に悠里の事を思い出しては鬱々とした気分になった。


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