俺様編集者に翻弄されています!
「忘我の愛」のクライマックスは三角関係の縺れだった。

 大正末期の伯爵家に仕えた女中が身分の差を越えて若き伯爵家当主と恋に落ちるのだが、そんな二人を妬んだ伯爵の弟があの手この手で二人を引き裂こうとする―――。


「やっぱりこっちのほうがいいか……」


 当初のプロットでは駆け落ちする内容だったが、氷室の修正案で二人に横槍的な存在を入れることになった。

 初めはなんとなく昭和っぽい感じがしてしっくりこなかったが、駆け落ちというシナリオ運びもなんとなくベタな気がしてきた。



(この障害をこの二人がどう乗り越えていくか、見ものだな……やっぱり恋愛には障害が付き物だからな)


 その時、プロットを見せた時の氷室の言葉が脳裏に浮かんだ。


 ―――やっぱり恋愛には障害が付き物だからな。

 最後に呟くように言った氷室の言葉が意味ありげで、ずっと気にかかっていた。けれど、いまさらそんなことをあれこれ考えても関係のないことだ。悠里はそう割り切ると、原稿に視線を戻した。


その時――。


 
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