俺様編集者に翻弄されています!
「ほんとですか!? わ、私! ユーリ先生の大大大ファンで、デビュー作からずっと読んでるんです!」


(あ……この子、私にそっくりだ)


 悠里はその女性を見た瞬間、かつての自分の姿と重なった。

 学生の頃、憧れていた作家に本屋で偶然見かけて、恥ずかしさもかなぐり捨てて声をかけた。自分から見知らぬ人に声をかけるなど、悠里にとってありえないことだったが、今のこの女性が自分に声をかけてきたと同じように、とにかくあの時は必死だったのだ。



「ありがとう、読んでくれて……嬉しいです」

 悠里は女性に微笑みかけると、更に興奮したように言葉を並べてきた。


「ずっと前、サイン会で先生のことお見かけしたんです。なんとなく顔も覚えてたからユーリ先生かなって思ったんですけど、ああ、思い切って声かけてよかった! もしかしてお仕事中でした? すみません」


 デビュー作から読んでくれてる貴重な読者だと思うと、悠里も釣られて笑顔になる。


「ありがとう、これからもよろしくお願いしますね」


「は、はい! あの、サインください」


 数年前の自分と全く同じ行動に、思わず口元が綻んでしまった。

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