俺様編集者に翻弄されています!
 ―――小説を批判するやつは必ずいる。けど、それ以上にお前の連載を楽しみにしている読者もいること忘れんな



 その時、悠里の頭に氷室の言葉がふと浮かんだ。


 何度もこの言葉に助けられ、勇気づけられてきた。仕事には厳しいが、影で支えになってくれている氷室を頼もしく思えば思うほど、想う気持ちが膨れ上がる。

 昔は自分の作品が好きでいつも読んでいると、サインを求めてくるファンにさえ戸惑ってしまっていた。


 そして、自信のない塊だった悠里はいつも下を向いていた。けれど、氷室のひとつひとつの言葉がそんな頑なな悠里の心を解かして、あってはならないことだと頭の中ではわかっていたはずなのに、いつの間にか心の中に入り込んできた氷室に惹かれてしまった。




(いっそのこと、ただ厳しいだけの嫌な編集者だったらよかったのに……そうすれば、こんな報われない気持ちに気づくこともなかった)


 悠里がどうしようもない想いに、ため息をついた時だった。
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