俺様編集者に翻弄されています!
「はい」


『ああ、俺だけど、最終回の原稿終わったか?』


 相変わらずぶっきらぼうな氷室の声にも、今では愛おしささえ感じてしまう。


「はい、一応できてます。これ、そっちに今日持っていきますか?」

 時計を見ると、ちょうど午後の三時を指している。


『いや、ちょっとこっちも色々立て込んでて……お前、今夜時間あるか?』


 なんとなく躊躇うような語尾に、悠里はドキドキしながら携帯を握り直した。


「は、はい、時間あります」


『仕事終わって二十時くらいにお前のアパートに行くから、その時に原稿持って下に降りてろ』


「……え? どこかに行くんですか?」


 玄関先でてっきり原稿を渡すだけかと思っていたが、思わぬ氷室の言葉に小さな期待が生まれる。


(こ、これは……! デデデート!? って思っていいんだよね?)


 その時、突然頭の中にいつものモヤがかかり始める―――。
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