俺様編集者に翻弄されています！
　約束の時間を数分過ぎたところで氷室が現れたが、いつになく疲れた表情をしていた。

　いつも氷室はそれを悟られないように隠しているが、悠里にはわかっていた。

（氷室さん、私のために……頑張ってくれてるんだよね）
　

　そう思うと、嬉しくもあり、申し訳なくもあり、またその疲れた気だるい氷室の顔も不謹慎ながら悠里をどぎまぎさせた。



「あの、今日は車じゃないんですね」


「ああ、飲むからな」


「え……？」



　いつも悠里のところに原稿を取りに来る時は大抵車だが、今日は徒歩で、電車に乗ろうとしていた。

（氷室さんと飲みに行くなんて！　初めてだよね……）

　そう思うと勝手に胸が踊った。


「まぁ、ちょっと仕事の話しもしたいところだが……そこのオーナーがお前に会わせろってしつこいくってさ、それに仕事の話しができるかもわからないし……言っとくけど、またこの前みたいに酔いつぶれたら、今度は放置して俺は帰るからな」


　ぎろりと横目で睨むように見られて釘を刺される。


　「はい！　もう二度とあんな飲み方はしません！」


　ぴしっと敬礼すると、氷室は変なやつ、と笑った。

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