俺様編集者に翻弄されています！
「氷室さん、今日わざわざ私を呼び出した本当の理由ってなんですか？」


「え……」


　ずっと気になっていたことを、氷室が口を開く前に悠里は意を決して氷室に尋ねた。


　このままでは何か隠し事をされているようでむず痒い。氷室は諦めたように小さくため息をつくと言った。


「お前の最終原稿が終わったら話すつもりだった」


　氷室が夜景から視線を悠里に移して、じっと見据えた。


「俺は、次回からお前の担当を外れる」


「え……？」


　心が洗われるようなロマンチックな夜景をバックに愛の告白なんて何度妄想したか知れない、けれど、実際にはそう簡単に事は起こらなかった。

「今、なんて……？」

　悠里は思わず聞き返してしまうほど、その言葉の意味が理解できずにただ呆然と立ち尽くした。


「宮森が文芸に異動が決まったんだ。俺が持ってる他の担当もひとまず区切りがついたからな、これからどうなるかはまだわからないが、とりあえずお前の後任に宮森が担当になる話が出てる」


「そ、そんな……」


「仕方ないだろ、上からの意向じゃ―――」


「勝手に決めないでください！」


　思わず悠里は声を荒らげて言った。

　周りに何組かのカップルが驚いてこちらを見ていたが、悠里はそんなことを気にする余裕もなかった。


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