俺様編集者に翻弄されています!
(お願いです! 氷室さん、こんな私についてきてくれませんか?!)



 馬鹿みたいに必死になって訴えかけてきたあの悠里の目は、今でも氷室の脳裏に焼き付いている。


 今思えば、あの時から悠里を見る目が変わったと思う。

 自分を好きだと悠里が気持ちを打ち明けた時、氷室は私欲に押し負けて今だけでもいいから悠里を抱きしめようと手を伸ばしかけてしまった。


 けれどそんな資格はない、と急に冷めてしまい伸ばしかけた手を下ろした。


 ―――この感情こそが、あいつをダメにする。



 その時、囚われていた記憶を呼び覚ますように氷室の脳裏にある記憶が蘇った。
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