俺様編集者に翻弄されています!
「忘我の愛」の連載が終わってから数日後、北村から電話があり、編集担当変更の旨を伝えられた。

 その時、悠里は何度も抗議の言葉を並べ、氷室に引き続き担当して欲しいと伝えたが、もう決まったことだからと、一切取り合ってはくれなかった。

 
 もし自分と氷室が長年二人三脚で作品を作っているのならば、担当を変更しないで欲しいという悠里の願いも叶ったかもしれない。氷室とは感性も何処となく似ていて、自分の作風をよく理解してくれていた。

 そんなわがままも通せないと思うと、悠里は氷室との絆の浅さを改めて思い知った。



 氷室に食い下がるのは本当にそれだけの理由なのかと言われれば違う。

 仕事に私情持ち込みたくない氷室にとっては、ただ色恋の好きだからという理由で、担当を続けることを望んでも迷惑なはずだ。


 氷室の目の前から勝手に逃げるようにして立ち去ってから数日、悠里は氷室のことで頭がいっぱいだった。

 思わず感情が高ぶって告白してしまったが、それについての答えは聞かなくてもわかっていた。


(はぁぁ……こんな時、誰でもいいから話しを聞いてくれる人がいたら……)


 その時、頭の中がぼうっとモヤがかる。
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