俺様編集者に翻弄されています!
「あれ? ユーリ先生?」


「っ!?」


 突然背後から声をかけられてびくりと肩がはねると、思わず手にしていた本を落としそうになった。


「ああ、やっぱりユーリ先生だ」


 現実に戻って振り向くと、背後に薔薇の花でも見えそうなくらいきらきらした笑顔で宮森が立っていた。


「み、宮森さん……どうして、ここに?」


「それはこっちの台詞だよ、偶然だね。僕はユーリ先生の小説が今日発売されるって聞いてたから、偵察みたいなものかな」


 きらきらした笑顔が目に眩しい。


 そして、鼻をくすぐる宮森の香水も不快だった。


「ユーリ先生、今お時間ありますか? よかったらすぐそこのカフェでお茶でもどうですか?」


「……いえ、結構です。すみません、あまり時間がないもので」


「え? もう連載だって終わったし、今ユーリ先生は原稿抱えてないはずだけどな」


(……う、なんでそんなこと知ってるのよ)


 悠里は愕然として、逃げ場を失った獲物のような気分になった。

< 285 / 340 >

この作品をシェア

pagetop