俺様編集者に翻弄されています！

　突如、宮森の声音が低くなって咄嗟に顔を上げると、宮森が頬杖をついて目を細めながら見据えていた。

　その眼差しが悠里の胸を真っ直ぐに貫いている。まるで反応を試すかのように。


「あの、宮森さんは氷室さんのライバルだって言ってましたけど……」


「ああ、実はニューヨークでね、僕と氷室は顔見知りなんだよ」


　宮森は再びにっこりと悠里に笑いかける。


「勤めてた出版社は違ったけど、編集者として駆け出しのあいつと僕は、いつも作家の原石を探してた。氷室が担当した作家は必ず売れた。けどね……どういうわけか一人だけ、賞まで受賞したことのある実力作家が氷室が担当になった途端全く売れなくなった」


「え……？」



　初めて聞く氷室の知られざる過去に、悠里は固唾を呑んで耳を傾けた。これ以上聞いてはいけないと思いつつも、氷室のことを知りたいという誘惑に押されてしまう。