俺様編集者に翻弄されています！
「どうしてこれを氷室さんが……？　「愛憎の果て」の担当は氷室さんじゃなかったはずなのに……」


「氷室は担当を受け持ったら、その作家の今までの原稿全てに目を通すやつなんだよ、僕からしたらそんな過去に振り返っても無駄な時間としか思えないけどね」


　宮森は呆れたような顔をして頬杖をつき、窓の外にぼんやり視線をやった。


　今思い返せば、氷室は悠里の文章の癖や表現の仕方や独特の描写に素早く順応して理解を示してくれていた。

　その時は、ただ単に仕事の相性がいいんだ。と思っていたが、それは氷室がユーリという小説家を仕事を始める前に全て熟知していたからだった。


「こん……な」


「え？」


　自然に掠れた声が口から漏れて、宮森は怪訝そうに悠里を見た。



（知らなかった……私は本当に心の底から氷室さんに支えられていたんだ）


　悠里は氷室美岬をいう男を改めて知り、俯きながらぼやける視界に固く目を閉じた―――。


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