俺様編集者に翻弄されています!
Chapter2
(氷室さん……私に何も言わないでニューヨークに帰っちゃうなんて!)
今にももつれそうな足を叱咤しながら、悠里は大海出版のエントランスを出ようとした。
その時―――。
「きゃっ」
「おっと、あれ? ユーリ先生?」
「っ!? み、宮森さん……」
悠里は勢いよく誰かにぶつかり、慌てて顔をあげると、驚いた顔をした宮森が悠里を見下ろしていた。
「そんなに慌ててどうしたの?」
「い、いえ……すみません」
悠里は軽く会釈をして宮森の横を通り過ぎようとしたが、ふいに後ろから腕を掴まれた。
「もしかして、氷室の話し、北村さんから聞いたの? あいつ、とうとう仕事からも逃げたんじゃ―――」
「ち、違います! 氷室さんはそんな人じゃありません!」
「ふぅん」
悠里をわざと挑発するかのように、宮森は口元で笑っている。それが、無性に悠里の苛立ちを煽った。
「あの白い封筒、きっと退職願いだよ。氷室はね、自分の担当作家全員切って、身辺整理してたから……おかげで僕はエミリー先生の八つ当たり受けるハメになってるけどね、僕としてはとんだ災難ってとこ」
宮森はエミリーの名前を口にすることさえ辟易している様子で鼻を鳴らした。
「私、あなたと作品を一緒に作っていく気なんてありませんから、宮森さんが私の担当になるくらいなら、別の出版社で本だします」
「へぇ、ずいぶん自信たっぷりだね、出版社なんて会社ごとにカラーがあるから、大海出版で売れっ子でも、他に行けば新人みたいな扱いされるかもよ?」
宮森はそう言いながら挑発を含んだ笑みを浮かべている。
「いいんです。新人作家としてもう一度やり直したとしても、本当に認められているのなら大海出版じゃなくてもベストセラー作家になれる」
「……」
宮森はしばらく何も答えなかった。悠里と宮森の間に重苦しい沈黙が流れたその時―――。
今にももつれそうな足を叱咤しながら、悠里は大海出版のエントランスを出ようとした。
その時―――。
「きゃっ」
「おっと、あれ? ユーリ先生?」
「っ!? み、宮森さん……」
悠里は勢いよく誰かにぶつかり、慌てて顔をあげると、驚いた顔をした宮森が悠里を見下ろしていた。
「そんなに慌ててどうしたの?」
「い、いえ……すみません」
悠里は軽く会釈をして宮森の横を通り過ぎようとしたが、ふいに後ろから腕を掴まれた。
「もしかして、氷室の話し、北村さんから聞いたの? あいつ、とうとう仕事からも逃げたんじゃ―――」
「ち、違います! 氷室さんはそんな人じゃありません!」
「ふぅん」
悠里をわざと挑発するかのように、宮森は口元で笑っている。それが、無性に悠里の苛立ちを煽った。
「あの白い封筒、きっと退職願いだよ。氷室はね、自分の担当作家全員切って、身辺整理してたから……おかげで僕はエミリー先生の八つ当たり受けるハメになってるけどね、僕としてはとんだ災難ってとこ」
宮森はエミリーの名前を口にすることさえ辟易している様子で鼻を鳴らした。
「私、あなたと作品を一緒に作っていく気なんてありませんから、宮森さんが私の担当になるくらいなら、別の出版社で本だします」
「へぇ、ずいぶん自信たっぷりだね、出版社なんて会社ごとにカラーがあるから、大海出版で売れっ子でも、他に行けば新人みたいな扱いされるかもよ?」
宮森はそう言いながら挑発を含んだ笑みを浮かべている。
「いいんです。新人作家としてもう一度やり直したとしても、本当に認められているのなら大海出版じゃなくてもベストセラー作家になれる」
「……」
宮森はしばらく何も答えなかった。悠里と宮森の間に重苦しい沈黙が流れたその時―――。