俺様編集者に翻弄されています!
 ―――美岬も子供みたいなこと言ってないで、いい加減自分の気持ちを認めたらどう?



 その時、ロディの言葉が脳裏をよぎった。

 自分の気持ちとは一体なんだ?と目を背けてきたが、実際氷室はどうしょうもなく悠里に惹かれていた。

ただそれを口にできないのは、個人的なトラウマに捕らわれているからだった。


「……らしくないだろ、俺……」

 氷室は自己嫌悪に陥り、もう忘れようと心に誓ったあの記憶に踊らされている自分にもっと自己嫌悪の深みにはまった。


「くそ、悠里どこだよ……」


 氷室の虚しいつぶやきは、ハドソン川を波立たせる風にかき消された―――。
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