俺様編集者に翻弄されています!
ようやく悠里が落ち着いた頃―――。
「なんで俺が大海出版辞める話しになってるんだよ」
悠里の話を聞いて氷室は眉間に皺を寄せて言った。
「え? だ、だって……北村さんに渡したのは退職届だったんじゃ―――」
「あれは休暇届だ」
「へ?」
思考回路がショートする音が脳内で弾けた気がした。
確かに北村が見せたものは封筒だったが、今思うとその中身をまだ見ていないと北村が言っていたのを思い出した。
「とんだ勘違いだな、ブサイク」
氷室は目を丸くしている悠里の頬をプニっと軽くつまんで笑った。
「ええっ!? も、もう! なんで言ってくれなかったんですか!? 私、てっきり大海出版を辞めてニューヨークに帰っちゃったのかとばかり……」
「ぷっ……あははは」
氷室は噴き出すとしばらく腹をかかえて笑っていた。そんな姿を悠里はただ呆然と眺めるしかなかった。
「辞めるわけないだろ、ただ……何もかもクリアにして、俺が初めて編集者として歩き出したこの街にくる必要があっただけだ」
「……どうして?」
「初心に返って……なんて、古臭い言い方だけど、色々考えてるうちにやっぱり俺はお前の担当を外れるなんて考えられないって思った」
氷室の温かな手が悠里の頬を伝った。真摯な眼差しと目が合うと、悠里は気恥ずかしさに顔が赤くなるのを感じた。
「だからこの国に一旦帰って、お前をもう一度俺のもとへ奪還するにはどうしたらいいか考えてた。それにはある程度まとまった休暇が必要だったんだよ」
「そ、そうだったんですか……私、賭けまでしてひとりで空回りだったんですね」
「賭け……? なんの話だ?」
悠里は北村に「艶人」の新作の原稿を見せた時のことを氷室に話した。
北村は次回作も「艶人」で連載するよう求めたが、その担当が氷室でなければ連載しない。
と半ば脅し気味に条件をつけたのだった。
「なんで俺が大海出版辞める話しになってるんだよ」
悠里の話を聞いて氷室は眉間に皺を寄せて言った。
「え? だ、だって……北村さんに渡したのは退職届だったんじゃ―――」
「あれは休暇届だ」
「へ?」
思考回路がショートする音が脳内で弾けた気がした。
確かに北村が見せたものは封筒だったが、今思うとその中身をまだ見ていないと北村が言っていたのを思い出した。
「とんだ勘違いだな、ブサイク」
氷室は目を丸くしている悠里の頬をプニっと軽くつまんで笑った。
「ええっ!? も、もう! なんで言ってくれなかったんですか!? 私、てっきり大海出版を辞めてニューヨークに帰っちゃったのかとばかり……」
「ぷっ……あははは」
氷室は噴き出すとしばらく腹をかかえて笑っていた。そんな姿を悠里はただ呆然と眺めるしかなかった。
「辞めるわけないだろ、ただ……何もかもクリアにして、俺が初めて編集者として歩き出したこの街にくる必要があっただけだ」
「……どうして?」
「初心に返って……なんて、古臭い言い方だけど、色々考えてるうちにやっぱり俺はお前の担当を外れるなんて考えられないって思った」
氷室の温かな手が悠里の頬を伝った。真摯な眼差しと目が合うと、悠里は気恥ずかしさに顔が赤くなるのを感じた。
「だからこの国に一旦帰って、お前をもう一度俺のもとへ奪還するにはどうしたらいいか考えてた。それにはある程度まとまった休暇が必要だったんだよ」
「そ、そうだったんですか……私、賭けまでしてひとりで空回りだったんですね」
「賭け……? なんの話だ?」
悠里は北村に「艶人」の新作の原稿を見せた時のことを氷室に話した。
北村は次回作も「艶人」で連載するよう求めたが、その担当が氷室でなければ連載しない。
と半ば脅し気味に条件をつけたのだった。