俺様編集者に翻弄されています!
(あ、そういえば……今日は「忘我の愛」の先行上映会だ。氷室さん、覚えててくれてるかな? って、何も言わないってことは、忘れちゃってるのかな)



 まだ理性が残った頭の中に、ふっと上映会のことが一瞬浮かんだが、氷室の与えてくるその熱がすぐに悠里の思考能力を奪い去った。



 最愛の人と作り出した最初で永遠の作品は、おそらく極上の映画に仕上がっているに違いない。


 甘い甘い恋の味に溶かされながら、悠里はゆっくり目を閉じた。


「氷室さんのキスって、甘いですね」


「そうか?」


「うん、まるでラズベリーみたい……」


「なんだそれ……」


 悠里の言葉に氷室の口元に優しく歪むと、お互いに笑みを交わした。


「……今夜、お前を連れて行きたいところがあるんだ」


「連れて行きたいところ?」


「ああ、楽しみにしてな」

 そう言いながら、氷室は愛おしむように何度も悠里に口づけた。


「ちょっとくらい教えてくれてもいいのに……」


「だーめ」


 再び甘く絡み合う二人をよそに、傍らに置かれたテーブルの上には「忘我の愛」の上映会のチケットが、窓から入り込んできたそよ風に小さく揺れていた―――。 
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