俺様編集者に翻弄されています!
――その時、枕元の携帯が鳴った。
「はい、あ……加奈?」
『あ、加奈? じゃないでしょ! いま何時だと思ってるのよぅ、打ち合わせするって言ったじゃない』
「え? 打ち合わせ…って、あああっ! ご、ごめん!!」
深夜まで作業をしていると、どうしても日付の感覚が鈍くなる。悠里は大事な打ち合わせを思い出すと、今までぼんやりしていた頭がようやく覚醒した。
武藤加奈。
大学時代の同人仲間であり、処女作の原稿を出版社に無許可で投下した張本人だ。
勝手に投稿して何が悪い? と言わんばかりの勢いに、あの時、悠里は何も言えなかった。
加奈は大手出版社「大海出版」に勤務するやり手の編集者で、前から悠里の作品を義理抜きで絶賛してくれていた。
いつか、自分のところで本を書いて欲しい。と言われ続けていたが、そんな大舞台に立ったことのなかった悠里にとって、それは二の足を踏む挑戦でもあった。それで作品を出し渋っている悠里に痺れを切らせた加奈が、とうとう実力行使に出たのだ。
そんなやり取りがあって、今現在、加奈は悠里の編集担当者だ。そして今の悠里を作ったといっても過言ではない。
「ごめん、今から用意してすぐに行くから!」
『ほんとにあんたって昔から時間にルーズのなところは変わってないんだから、じゃあ十四時にうちのカフェテリアでね』
「うん、わかった」
(はぁ、急がなきゃ……また怒られちゃう)
電話を切ると悠里は先ほどの夢の続きに未練を感じつつ、重い腰をあげてカーテンを全開した――。
「はい、あ……加奈?」
『あ、加奈? じゃないでしょ! いま何時だと思ってるのよぅ、打ち合わせするって言ったじゃない』
「え? 打ち合わせ…って、あああっ! ご、ごめん!!」
深夜まで作業をしていると、どうしても日付の感覚が鈍くなる。悠里は大事な打ち合わせを思い出すと、今までぼんやりしていた頭がようやく覚醒した。
武藤加奈。
大学時代の同人仲間であり、処女作の原稿を出版社に無許可で投下した張本人だ。
勝手に投稿して何が悪い? と言わんばかりの勢いに、あの時、悠里は何も言えなかった。
加奈は大手出版社「大海出版」に勤務するやり手の編集者で、前から悠里の作品を義理抜きで絶賛してくれていた。
いつか、自分のところで本を書いて欲しい。と言われ続けていたが、そんな大舞台に立ったことのなかった悠里にとって、それは二の足を踏む挑戦でもあった。それで作品を出し渋っている悠里に痺れを切らせた加奈が、とうとう実力行使に出たのだ。
そんなやり取りがあって、今現在、加奈は悠里の編集担当者だ。そして今の悠里を作ったといっても過言ではない。
「ごめん、今から用意してすぐに行くから!」
『ほんとにあんたって昔から時間にルーズのなところは変わってないんだから、じゃあ十四時にうちのカフェテリアでね』
「うん、わかった」
(はぁ、急がなきゃ……また怒られちゃう)
電話を切ると悠里は先ほどの夢の続きに未練を感じつつ、重い腰をあげてカーテンを全開した――。