俺様編集者に翻弄されています!
Chapter2
「あ……!」
パラパラと紙ふぶきのように原稿がゴミ箱に散っていくのを見ながら、悠里はあまりのことにただ呆然とするしかなかった。
「ひ、ひど……い」
「は? ひどい? あぁ、お前の原稿のことか? わかってるじゃないか」
絞り出されたような悠里の声は弱々しく震えていたが、氷室はものともせず無表情だった。
「だいたいプロット書くよう言い忘れてたのそっちじゃないですか、編集者としてはあるまじき失態ですよね?」
悠里はかっとなって口が滑ると、氷室は椅子から立ちあがって冷たい目線を向けた。
「新作のプロット執筆はだいぶ前から武藤さんに言われてたと思うけど? まさか、まっさらな状態からこれを書いて持ってきたんじゃないだろうな?」
(う……そうだった……)
新作のプロットは実は二週間前から加奈に催促されていた。けれど、なかなかいいアイディアが思い浮かばず、月日が過ぎてしまっていたのだ。氷室に裏を取られていると思うと勝ち目はなかった。
「俺はてっきりもう出来上がってるものだと思ってたけど?」
「うぅ……」
それを言われてしまうと立つ瀬がなくなってしまう。強気に出てみたが、明らかに悠里の分が悪い。
「いくら叩き上げといっても、こんないい加減なプロットよく持ってこれたな……? 仕事を舐めるな」
「な……っ!?」
心外なことを言われ、悠里は手のひらに指を食い込ませるように握った。
「あんなプロットで書いても絶対に売れない。展開が見え見えだからな、お前だってわかってただろ」
(……この人、全部わかってて言ってるんだ……)
展開が見え見えでも、原稿を書く時にはもっと読み手を引き込めるような文章でカバーできればと少し甘い考えを持っていたことも確かだ。
そんな悠里の隠れた怠惰なあらわれも、氷室は見抜いていた。それもかなりの慧眼で―――。
―――むちゃくちゃ仕事ができる人だから。
その時、悠里は加奈の言葉を思い出した。
(仕事ができる人……か、こういうことだったのね)
パラパラと紙ふぶきのように原稿がゴミ箱に散っていくのを見ながら、悠里はあまりのことにただ呆然とするしかなかった。
「ひ、ひど……い」
「は? ひどい? あぁ、お前の原稿のことか? わかってるじゃないか」
絞り出されたような悠里の声は弱々しく震えていたが、氷室はものともせず無表情だった。
「だいたいプロット書くよう言い忘れてたのそっちじゃないですか、編集者としてはあるまじき失態ですよね?」
悠里はかっとなって口が滑ると、氷室は椅子から立ちあがって冷たい目線を向けた。
「新作のプロット執筆はだいぶ前から武藤さんに言われてたと思うけど? まさか、まっさらな状態からこれを書いて持ってきたんじゃないだろうな?」
(う……そうだった……)
新作のプロットは実は二週間前から加奈に催促されていた。けれど、なかなかいいアイディアが思い浮かばず、月日が過ぎてしまっていたのだ。氷室に裏を取られていると思うと勝ち目はなかった。
「俺はてっきりもう出来上がってるものだと思ってたけど?」
「うぅ……」
それを言われてしまうと立つ瀬がなくなってしまう。強気に出てみたが、明らかに悠里の分が悪い。
「いくら叩き上げといっても、こんないい加減なプロットよく持ってこれたな……? 仕事を舐めるな」
「な……っ!?」
心外なことを言われ、悠里は手のひらに指を食い込ませるように握った。
「あんなプロットで書いても絶対に売れない。展開が見え見えだからな、お前だってわかってただろ」
(……この人、全部わかってて言ってるんだ……)
展開が見え見えでも、原稿を書く時にはもっと読み手を引き込めるような文章でカバーできればと少し甘い考えを持っていたことも確かだ。
そんな悠里の隠れた怠惰なあらわれも、氷室は見抜いていた。それもかなりの慧眼で―――。
―――むちゃくちゃ仕事ができる人だから。
その時、悠里は加奈の言葉を思い出した。
(仕事ができる人……か、こういうことだったのね)