俺様編集者に翻弄されています!
 けれど、「艶人」で連載できる作家はほんのひと握りで、油断していると、すぐに新しい作家に枠を取られてしまう。現に悠里も「愛憎の果て」の連載が終わって新作を練っている間、すぐに別の作家が連載をスタートし始めてしまった。すぐに新作を書いて浮上しないと、どんどん埋もれて行ってしまう作家業界も案外シビアな世界なのだ。


「けれど、あの連載雑誌にこのプロットの小説は取り上げられない。続きが読みたいと思わないからな、これじゃお前の自己満足小説だ」


「自己満足……小説……?」


「売り出すということは、多少は読み手の期待にも応えなきゃならない、どういうものが読みたいのか考えろ、それができなきゃ……」


 氷室の鋭利な目と目が合うと、悠里は思わず喉を鳴らして唾を呑みこんだ。


「小説家をやめろ―――」


「え……?」


 無遠慮な物言いに悠里は絶句し、言葉が詰まって口をパクパクさせた。
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