俺様編集者に翻弄されています!
「お前、「愛憎の果て」という傑作を生み出したっていう自覚をもっと持て、小説家は書けなくなったら終わりだからな」


「でも、その名作の作者はブサイクですけど」


 氷室に言われっぱなしで面白くないと、悠里がここぞとばかりに小さな抵抗を見せた。すると氷室は一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに噴き出して笑った。


「お前、案外根に持つタイプなんだな、だからブサイクって言われるんだぞ、ネチネチの納豆女」


「な、なななな納豆!? も、もう―――」

 ものずごい例えに悠里はムキになって反論しようとしたが、クスクス笑う氷室に何も言えなくなってしまう。

「ブサイクでいいんですよ、小説を書くのにお洒落とか必要ないですから」


「お前はお洒落というよりそれ以前の問題だな、例えば……」


 そう言って氷室は不意に顔を悠里に近づけた。


「っ!?」

 氷室の唇が近距離で目にとまると、悠里の心臓がビクリと跳ねあがった。


「昨日、焼肉食べたろ? 匂うぞ」


「……へ?」


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