俺様編集者に翻弄されています!
「ぷっ!」


 悠里が真っ赤になって両膝をつかみながら俯いて握りしめていると、頭の上で氷室が思い切り噴き出した。


「あはは、お前、面白いやつ!」

 すると、氷室は腹を抱えながら声を立てて笑い出した。


(わ、笑ってる……さっきまで仏頂面だったのに!)


 悠里は氷室の意外な一面を見たような気がして瞬きを忘れた。

(氷室さんの笑った顔……こんなふうに笑うんだ)

 氷室の心底笑った顔を見ているうちに、先ほどまでの険悪な雰囲気もすっかり消え、悠里も釣られて笑顔になる。


 氷室はひとしきり笑い終えると、不意に悠里の頭の上に手を乗せた。その手のひらの感触がじんわりと伝わってドキリとした。


「明日、俺が泊まってるグランドパークホテルのロビーに十六時に来い」


「え……?」


「いいか、遅刻すんなよ?」


「明日も仕事ですか?」


 明日は土曜日。

 普通なら休日だが、この出版業界に休日はあってないようなものだ。それに氷室は休日であっても当たり前のように仕事をしそうなタイプに見えた。
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