俺様編集者に翻弄されています!
「えーっと、確かこの辺に……」


 悠里はシャワーを浴びてもう一度寝ようと試みたが、お湯を浴びたことでかえって目が冴えてしまった。

もう寝るのは諦めてこのまま起きていようと思い、引き出しのどこかにしまった化粧道具を探していた。夜中の三時にゴソゴソと自分は何をやっているのだろうかと自問してしまう。
 


「あ、あった!」


 普段化粧をしない悠里にとって、もっとも必要ない道具だが、必要な時は突然にやってくる。

(そういえば前に買ったの思い出した……中身は―――)


「ひぃっ!」


 液体ファンデーションの蓋を開けると、数年使っていなかったためかオイルと分離したものがニュルッと出てきた。

アイシャドウチップもかぴかぴにひび割れている。



(……女子力ナシ)



 そんな言葉が悠里の頭の上にのしかかってくる。


(化粧道具くらい買いなおせってことだろうね……あはは、こうなったらとことん全部買い直してやる! 女子力だってメキメキと……アップするかな……)



 悠里は全て使い物にならなくなった化粧道具をしばらく見つめ、思いを断ち切るようにポーチごとゴミ箱に捨てた。
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