俺様編集者に翻弄されています!
 六本木通りは週末ともあって、人通りが多く賑わっていた。

 人が苦手な悠里は、俯きながらすたすたと人の目をかいくぐって目的地まで急いだ。


 チラリと周りに視線を向けてみると、カップルが肩を並べて歩いていたり、週末なのにスーツを着た会社員などが行き交っていた。

(みんなどこへ何しに行くんだろう……)


 と疑問に思いながらホテルのエントランスを潜り、ロビーのソファへ腰をおろした。


 氷室が宿泊しているホテルはグレードの高そうなホテルで、何も考えずにスタスタ入ってきてしまったが、我に返ると、自分が場違いな存在なのではないかと思えてきた。あたりを見回すと、外国人の宿泊客がやけに目立った。どこの言葉かわからない言語の会話が遠くから聞こえてくる。

 六本木といえば、各国の大使館が集結している。きっとそこの関係者なのだろう。

 天井をみると煌びやかなシャンデリアがぶら下がっていて、見ているだけで気分が高揚してくる。


(いいなぁ、こんなホテルに一回でいいから泊まってみたい……)


 悠里が惚けていると、いきなり背の高い外国人が話しかけてきた。


「Excuse me. Are you staying here?」
<すみません、ここの宿泊客ですか?>


「……へ?」


「Who is with you?」
<誰かとご一緒ですか?>


 完全に悠里の思考回路はストップしてしまい、話しかけてきた外国人のブルーアイに引き込まれそうになった。

 
 その時―――。



「She is with me. What`s happen?」
<彼女は私の連れですが、どうしたんですか?>


 聞き覚えのある声がして悠里は慌てて振り向いた。するとそこには、不機嫌そうな顔をした氷室が腕を組んで立っていた。


「oh! sorry I didn`t know you have already with someone bye」
<おっと、失礼。君が既に誰かと一緒だなんて知らなかったんだ、じゃあね>



 そう言って、ブルーアイの外国人は小さく舌うちながらその場を去った。


 悠里は恐る恐る氷室の顔を窺うようにちらりと上目遣いで見ると、背筋も凍るような目で悠里を見下ろしていた。


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