俺様編集者に翻弄されています!
加奈と待ち合わせているカフェテリアは五階にあった。
エレベーターに乗り込み、中に貼り付けられている「愛憎の果て」というタイトルのポスターが目に入ると、自分の作品がこうして形になるのを嬉々として眺めた。
「あ、すみません! 乗ります」
「あ、はい……」
その時エレベーターにひとりの女性社員が乗り込んできて、悠里は顔を隠すように俯いて隅に寄った。
「あの……この本読みました? いいですよねぇ! 私、ユーリのファンなんです」
「……え」
たまたま乗り合わせただけで、陽気に話かけてくる女性社員に戸惑いつつ、悠里は薄笑いを浮かべて相槌を打つように首を揺らした。
「ユーリ」は悠里のペンネームだ。
(もしかして……この人、私がユーリって気づいたんじゃ……ううん、でもそんなはずないよね、とにかくごまかそう……)
悠里は人前に出たくないがために一切の雑誌取材を断り続けている。だから世間一般には顔は割れていないはずだ。
「そ、そうですか……」
悠里はひたすら俯きながらこの社員がさっさと降りてくれることを祈ったが、結局五階まで一緒だった。
(だから出版社に来るのは嫌なんだ……)
できれば一日中妄想に浸っていたい、時にはいいネタになる時もある。悠里はそんなことを思いながらそそくさと五階で降りた。
エレベーターに乗り込み、中に貼り付けられている「愛憎の果て」というタイトルのポスターが目に入ると、自分の作品がこうして形になるのを嬉々として眺めた。
「あ、すみません! 乗ります」
「あ、はい……」
その時エレベーターにひとりの女性社員が乗り込んできて、悠里は顔を隠すように俯いて隅に寄った。
「あの……この本読みました? いいですよねぇ! 私、ユーリのファンなんです」
「……え」
たまたま乗り合わせただけで、陽気に話かけてくる女性社員に戸惑いつつ、悠里は薄笑いを浮かべて相槌を打つように首を揺らした。
「ユーリ」は悠里のペンネームだ。
(もしかして……この人、私がユーリって気づいたんじゃ……ううん、でもそんなはずないよね、とにかくごまかそう……)
悠里は人前に出たくないがために一切の雑誌取材を断り続けている。だから世間一般には顔は割れていないはずだ。
「そ、そうですか……」
悠里はひたすら俯きながらこの社員がさっさと降りてくれることを祈ったが、結局五階まで一緒だった。
(だから出版社に来るのは嫌なんだ……)
できれば一日中妄想に浸っていたい、時にはいいネタになる時もある。悠里はそんなことを思いながらそそくさと五階で降りた。