俺様編集者に翻弄されています!
「あの、一応氷室さんの分も買ってきたんですけど……」


「なんだよ、俺は自分でチケット買うってのに……まぁいいか」


(な、なんなのよぅ~人がせっかく買ってきたのに!)


 悠里がムッとしていると―――。


「いいか、お前は小説家じゃない」

 急に真剣な眼差しを向けられて、悠里はドキリとして顔を上げた。

 今にも吸い込まれていきそうな、氷室の瞳に釘付けになる。



「この映画を、今から客として観るんだ」


「……え? 客としてって? ど、どういう―――」


 氷室の言うことはいつもわけがわからなかった。けれど、今、言われている事は更に理解不能だった。


「お前、自分の映画に一度でも金を払って観たことがあるか?」


「氷室さん……?」


 その瞳の中に、自分の知らない何かを氷室が伝えようとしているのだと直感で感じ取ると、悠里は無言で氷室を見つめ返した―――。
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