俺様編集者に翻弄されています!
「悠里! こっちこっち! もう、遅い」


「ごめん! ほんっとごめん! あぁ、お詫びに何か飲み物奢るから」

 カフェテリアに入ると、加奈が大ぶりに手を振って手招きしているのが見えた。いつ見ても綺麗で、かっこいい女性だと憧れを抱いてしまう。


 加奈は大学卒業とともにここの大海出版に就職して、めでたく去年結婚した。

それでも仕事をバリバリこなして、締切に間に合わずにひーひー言ってる小説家の尻を叩いては影でしっかり支えてくれるアメと鞭の精神を持つ編集者だ。

そんな彼女を悠里はいつも羨望の眼差しで見ていた。


「コーヒーでいい? 加奈はいつもブラックだったよね」


「あ、うん。ありがとう、でもジュースでいいよ」


 加奈の歯切れの悪い返事に悠里はブラックコーヒーのボタンを押しとどまった。そして訝しげに思いながらも加奈にフルーツジュースを手渡した。
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