紅 × 蒼
1
「紅さんっっ!!」
真っ暗な中、私を呼ぶ声が聞こえる。
「紅さんっっ!!!」
馴染みのある、きれのある声。
「紅さんっっっ!!」
…わかってる。わかってるんだけど。
「・・・なによ・・・?」
重たい瞼を渋々開け、私は目の前にいる男に怒り気味で問う。
あぁ、そうだった。
本宅ではいつもこうだった。
「なによじゃないですよ。紅さん。」
男は困った顔を私に向ける。
「・・・・。」
「今日も行かれますか?」
彼は不安げな表情を浮かべながら
、静かに聞いてくる。
今日も行く?
当たり前。今の私の唯一の生き甲斐と言えば、コレだけだもの。
「行く」
「分かりました。(相変わらず切り替え早いな)」
目の前の男・・・・私の世話役の祥(しょう)は、私とあの子を一番間近で見てきた人。
そして
この天王寺組のしたっぱではあるが、れっきとしたヤクザだ。