紅 × 蒼
祥side
世界はあんがい脆いもんじゃないかと思う。
「いってらっしゃい。」
背中を向け、門を出ていく彼女に声をかける。
振り向いて返事をしない事も、もう慣れっこだ。
「紅の嬢も、皮肉なもんだな。」
紅さんを見ていたら、後ろから声がふってくる。
「…あ。 栄太さん。」
後ろにいたのは天王寺組最年長、栄太さん。
「ずっと一人で抱えてんだろ。重い重い足枷を。」
もう、姿のないあの方を想いつめるように栄太さんは話す。
「紅の嬢は、それでもまだ諦めてねぇんだな。」
「紅さんは、きっと誰よりも悲しいはず。」
「真実が知りたいだけの、普通の女の子なんですよ。」