きみのぼく
別れ
ぼくが生まれたのは一面緑の世界だった。
ひんやりとした空気が張り詰めたある日、ぼくは気づくと寝ている間に抱きかかえられて大きな乗り物に乗せられていた。
大きな乗り物の中には見知らぬ顔人ばかり。
ぼくと同じくらいの小さな女の子と男の子
少し大きなねぇねぇと呼ばれる女の子
そして彼らのお母さんとお父さんがそこにはいた。
『ぼくのおかあさんは?おとうさんは?おにいちゃんは?』
立ち上がって大きな乗り物の窓からを外を見ると
ぼくの家族が手を振っていたり
泣いているのが見えた。
『なんで?どうして遠くにいるの?ぼくはもう戻れないの?』
ぼくは必死に叫ぶけど
誰も乗り物からは下ろしてくれない。
「ちゃんとお別れしなきゃね。」
そう言って彼らのおかあさんは、ぼくを抱きかかえて
ぼくの手を掴み左右に振った。
『お別れって?どうしてお別れしなきゃならないの?』
すると乗り物は動き出してぼくの家族は徐々に見えなくなった。
『行きたくない、いやだ下ろしてくれよ!』
何度も泣き叫んだ。
でもぼくの弱い声は全く届かなかった。