僕が男になった理由
初めての人
慣れない空気に少し違和感を持ちつつ、彼の顔を見た。
…涙目だ。
凄く真剣なのだろうか。僕をまっすぐと見つめる目は今にも泣きそうな位に潤んでいた。
普段は目に平行な眉もハの字に下がり、迷子の子供の様な顔をして。
小刻みに震えていた彼の手が僕の手を物凄く強く握りしめた。
何だか僕は凄くギュッと抱き締めたくなった。
だけど…
だけど僕はこの手を取ってはいけない…。
取っちゃいけないんだ
「…琉依さん?」
「…僕と付き合っても…きっと池岡さんは幸せになれません」
「…え?」
「だから…僕は…」
「琉依さん」
「はい」
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