和久井さん、さんじょー



…?理事長が私のほうへ近づいてくる


「お前さんが…和久井華、かね?」


「は、はい。和久井です」



「…大きくなったのう。あの頃のそちはまだ幼いひよっこだったからの」





「あのどこかでお会いしましたか?私が小さいころ…」



「そちは覚えておらんか。そぅかそぅか…、まぁ…あんな事があればの」


あんな事?なんだろう


「あんな事とは…?」


「それすら覚えておらんのか。…ああそうだった、そちの母からの伝言はそういう意味だったのか。ああ、すっきりした」





「まあその内分かる。ほとんどがんじがらめのまま、だけどな」


「…私がその紐を解き放ってあげましょう」



そんな自信満々なセリフをはいたのは、やはり杏樹



「杏樹…」


私はおもむろに杏樹を呼んだ。
杏樹はにこり、と私に笑いかけた


「大丈夫よ、華は私が守るわ。蘭藤水紀と同じ、いえ、梶和泉と同じように、ね」


蘭…くん?


「蘭く…ん?杏樹は蘭くんの居場所わかるの!?ねぇ杏樹!」


「杏樹よ、今はお前がいたらそのがんじがらめの紐をそちがめちゃくちゃにするぞよ?和久井華、少しは静まれ」


理事長のどす黒い声で私の理性は生き返った。


「は、はは、あの、すみませ…」


「華ちゃ、…大丈夫!?」


「おい大丈夫、かよ」



皆私の元へ駆け寄ってくれる。
ああ、仲間って大切だなぁ。




…蘭くん、私は元気よ。すごくすごく元気。約束、守れてるよ、、



理事長が言っていた事、あれも全てわかってる。

でも私が思い出そうとしてくれないの。


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