【完】ヒミツの恋を君と。
「モカー、これ3番テーブルのお客様に運んで」
店長が、ロイヤルミルクティをトレーに3客、載せてあたしに渡してくれた。
「はーーい!」
やっぱり変身するってすごいかも!
自分に自信が持てたら、こんなに前向きに……。
「あっ!?」
トレーを持ちながら、3番テーブルの方向にスキップするがごとくの勢いで振り向けば、ちょうどカップを片付けに来ていた晴とぶつかってしまった。
「うわっ!うわぁっ!!」
カップの中のロイヤルミルクティが大波を作ってこぼれ始める。
「バカ!動くな!」
晴にそう言われても、動揺してるあたしは、余計にトレーを揺らしてしまって。
今度はカップとソーサーまでガチャガチャ動き出す始末。
ダ、ダメっ!
カップが倒れてしまったら、床にミルクティをぶちまけてしまうことになる。
それどころか、床に落としたら、割れてしまう。
大惨事になる───!
パニックが頂点に達し、現実逃避の如く、目をギュッとつぶったその時。
トレーを持ってる両手が覆われる感覚を感じてハッと目を開けた。
「落ち着け!バカ!」
見上げると、目の前に晴が立っていて、動揺で震えてたあたしの両手の揺れを止める様に、その両手でギュッと掴んでくれてた。