【完】ヒミツの恋を君と。
あたしの頬から手を離して、くるっと背中を向けた晴。


顔だけこっちに振り向いて、「行くぞ」って言ってから歩き出した。





「あ、ま、待って!…あっ!」


「なに?」





晴の手にスーパーの袋があるのに気が付いた。

さっき春から逃げた時、本屋さんの前に置いたままにしてた荷物を晴が持ってきてくれたんだ。





「買い物の袋、拾ってくれたの?……ごめ……」


「あぁ?」


「あ、いや……ありがとうございます」





その荷物を持とうと手を伸ばしたら、ぶっきらぼうに「いい」と言って、あたしが並んだ左側とは反対の手に袋を持ち直した。


晴は、口にはしないし、態度もいつも並みに横柄だけど、きっとあたしのことを心配してくれている。


それは、あたしに伝わってくる。





「晴、ありがとう」





言ってみて初めて分かった。

『ごめんなさい』より『ありがとう』と口にした方が、晴を近く感じる。



晴もそう感じてあんな風に言ってくれたんだとしたら、嬉しいな…。






夜道を2人で歩く。

晴は何にも聞いてこない。



ただ、2人で並んで歩く。

隣に晴がいてくれるだけで、心が穏やかになっていくのを感じてた。





いつからこんなに晴の存在があたしの中で大きくなってたんだろう?


ほんの数ヶ月前は、心が穏やかになる暇なんてない程、春と春ちゃんのことでいっぱいいっぱいだったのに……。




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