【完】ヒミツの恋を君と。
背中の方から春ちゃんの『違う…桃ちゃん待って!』言う声が聞こえたけど、あたしはその声から逃げ続けた。





多分、春ちゃんの顔を見るのが怖かったんだと思う。





春ちゃんに嫉妬する自分を見られるのが怖かった。

そして、春ちゃんに“あたしも春のことが好き”そう言われるのが怖かった。





春に告白されてる春ちゃんを見て気付いてしまってたから…。





“春ちゃんも春のことが好き”





告白されてる時、春ちゃんはいつもの数倍可愛かった。

真っ赤な顔して、春を見つめる春ちゃんは、間違いなく恋する女の子の顔だった。




その時まで全然気付いてなかった─。




春ちゃんは自分の気持ちにいつ気付いたの?

気付いたその時、どんな気持ちだったんだろう?


そんな思いが胸の中を締め付ける。






逃げるあたしの心の中には、



失恋した失望感と、

嫉妬する醜い気持ちと、



春ちゃんの気持ちに気付けなかった自分を責める気持ちでいっぱいだった。






春ちゃんは、あたしの気持ちに気付いてくれてた。



「応援する」って言ってくれた。



もしかしたら、あたしにそんな風に言ってくれた時には、もう自分の気持ちを自覚してたかもしれない。






春ちゃんはずっと、あたしのことを思って自分の気持ちを押し殺してたんじゃないかと思う。


春ちゃんはそういう子だから…。


< 155 / 499 >

この作品をシェア

pagetop