【完】ヒミツの恋を君と。
「そんな風に思えるお前は最低じゃないよ」


「へ……」


「人付き合いが苦手で、イケメンが苦手なお前が、男の格好してまで、客の前に出て頑張ってんだろ?」


「晴…」


「もっと自信持てよ。自分の痛みより、他のヤツのことを考えられるお前は、十分強いヤツだと思うけど?」







晴の言葉があたしの強張ってた心を緩めていく。


胸が熱くなって、視界がぼやけた。



熱い雫が頬を伝い始めると、もう止められなかった。


止め処なく、涙が零れ落ちていく。





「……っ…」





こんなに泣いたのは久しぶり。

ずっと泣いちゃいけないって思ってた。




泣いていいのは春と春ちゃんで、傷つけたあたしじゃないって思ってたから。

泣く資格すらないって思ってた。




どうしよ……もう、止まらない…。




そう思った時、晴の手が伸びてきた。

勢い良くあたしの頭はぐいっと引き寄せられる。





それは動揺する間もなく、一瞬の出来事で…。





あたしの額は晴の胸にトンっと当たって、その瞬間、晴の匂いに包まれる。

あたしは晴に抱き寄せられてた。





「……うっ……ふぇっ……」





晴の胸、あったかい…。

頭に置かれた大きな手も温かい…。




その心地いい温もりと匂いがあたしを包むから、余計に涙が止まらなくなる。


何ヶ月間も我慢した涙が、溜め込んだ辛さと一緒に流れ落ちていく。



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