【完】ヒミツの恋を君と。
晴が好き…。





寝てしまう前に感じた感情が蘇ってくる。

あの時、晴の温かい手はあたしの頭を撫でるように包んでくれてた。


その温もりは、凍り付いていたあたしの心を溶かしてくれた。




晴が好き…。





「……晴」





無意識にあたしはその名前を声に出す。





「晴」





今、この体勢で起きたら恥かしいとか思ってたくせに、その閉じてる目を開いてあたしを見て欲しいと言う矛盾。


でも、声を掛けても晴は一向に起きる様子がない。




熟睡してる…。




だんだん気が大きくなってきたあたしは、無意識に伸ばしてた指で晴の鼻にほんの少しだけ触れた。


すると、さっきみたいに眉間にシワを寄せて迷惑そうな顔をする。


その顔が面白くて、思わずフッと噴出してしまった。



起きないし。





ふと、晴に鼻を噛まれた日のことを思い出した。



あんなにドキドキさせられたのは生まれて始めてだった。

晴はあの時、何を思ってあんなことをしたのかな?



噛んだ後の晴のイジワルな笑顔を思い出す。



あの日、ドキドキしてたのはあたしだけ?

そう思うと、少しムカッとした。





「晴、起きないと鼻噛むよー」





晴に顔を近付ける。





「噛むよ…仕返しだよ」





今なお寝続ける晴の鼻に口を近付けて、あーんと開いた。



本気で仕返ししてやる!

急にあんなことされた乙女の動揺を思い知ればいい。



そう思って晴の鼻元に口を近づけたのに、寸前であたしは口を閉じて、その鼻先に、一瞬だけ唇を触れた。


< 165 / 499 >

この作品をシェア

pagetop