【完】ヒミツの恋を君と。
「…っ!?」

「……」





その瞬間、あんなに起きなかった晴の目がゆっくり開いた。

あたしはびっくりして、近付いてた顔をパッと離したけど。




ど、ど、ど、どうしよう?

晴、もしかして気付いたかな?




あ、あたしなんで今、鼻にキスなんかしたの?

無意識にキスという行動を起こしてた自分にパニックになってしまう。




焦ってワタワタするあたしをよそに、晴はまだ焦点の合ってない目で、あたしをボーっと見つめてる。





「あー朝…?悪い、俺まで寝てしまって」


「えっ?あ、あ……」


「帰るわ」


「えっ!?」





あたしが動揺でアワアワしてる間に晴があたしに背中を向けてふらっと立ち上がった。





「ちょ、ちょっと待って!」





あたしは大きい声を出して、床に置いていたスクールバッグを取ろうとした晴の腕を掴む。


「……」





晴は無言のままであたしに振り向いたけど、何を言おうとして引き止めたわけでもなかったあたしもその瞬間、無言。


ただなんとなく……っていうか、背中を向けられた瞬間、寂しくなって。





「あーえっと…『俺までねてしまって』って晴が言うってことは、やっぱりあたしが先に寝ちゃったんだよね?…ごめんね、家は大丈夫?……寝てるあたしなんてそこら辺に転がして帰ってくれても良かったのに…」





落ち着かなくて一気に喋ったあたしを晴はボーっとした顔で見てる。


まだ覚醒してなさそうな目。

その目があたしのまん前までずいっと近付いた。





「目、腫れてる。お前はもう大丈夫なのかよ?」


「…っ」





間近で響く、いつもより掠れた声にまた、涙が零れそうになった。


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