【完】ヒミツの恋を君と。
春ちゃんは涙を次々に零しながら、あたしの話を聞いている。





「好きの種類が違うんだよ。だから比べられない」






あたしの言葉を聞いた春ちゃんが俯いた。

春ちゃんに再会できたら、もう一度言おうと思ってた言葉。




“あたしは春のこと好きじゃないよ”。




春ちゃんが大切だから、嘘を吐かなきゃいけないって思ってた。



でも。


春ちゃん越しに見える正門。

そこに晴が立ってる。


晴、ありがとう。


さっきの晴の言葉で、あたしは大きな間違いをしてることに気が付いたの。





『心を許し合えてる相手になら、頭で考えた言葉じゃなくて、ここの言葉が先に出てくるはずだから』





ここ───あたしは胸元をギュッと握った。



「あたしね、春の事が好きだったよ」


「……桃ちゃん」


「往生際悪く、いつまでも否定しててごめんね。もっと早く本当のこと言うべきだった」





笑顔で言えた。

そんな自分にびっくりした。




春ちゃんのことが大切なら、嘘を吐くんじゃなくて、本当の心でぶつかるべきだった。

怒っても、泣いても、きちんとぶつかるべきだった。



それが出来てれば、少しは何かが違ったのかも知れない。


あたしの言葉を聞いた春ちゃんは何度も「ごめんなさい」と言ったけど。





「ごめんなさいはあたしだよ。春ちゃんは逃げずに何度も何度もあたしと話しをしようとしてくれたのに、あたしは逃げてばっかりだった。ごめんね」





視線を感じてそちらの方に目を向けると、正門からこっちに向かって歩いて来る、よく知ってる人影を見つけた。



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