【完】ヒミツの恋を君と。
「吉丘?……春華…?」





正門から出てきた春があたし達を見て立ち止まった。

春のその声に、春ちゃんが振り向かないままビクッと体を震わす。




それを見てやっぱり。と思った。


春ちゃんはあたしが転校してから、春を避け続けてたんだと思う。

自分を責めて、春に近付かない様にしてたんだと思う。



あたしが逃げたことで、春も深く傷つけてたんだ。





「春」


「え?」


「あたし、春のことが好きだった」


「…え」





目の前の春はあたしを見つめたまま固まって、春ちゃんは俯いてた顔を跳ね上げてあたしを見た。




「もう、過去形だけどね」





あたしの言葉を聞いて、我に返った春は、春ちゃんの方をチラッと見てから、自分の頭をわしゃわしゃかき混ぜる。




「…ごめん、吉丘。俺、フラれたけど、やっぱりまだ春華のことが好きなんだ」




過去形って言ってるのに、律儀に謝る春が、春らしい。

春の言葉を聞いた春ちゃんは、また俯いて肩をふるわせた。


今度はあたしがそんな春ちゃんを抱きしめてから口を開く。





「うん、知ってる」


「え?」


「この間駅で会った時、春は春ちゃんの心配ばっかしてるんだもん」


「あ……いや、それは……ごめん」





目の前で春が申し訳なさそうに頭を下げてる。



不思議。

その姿にほんの少し切なさを感じても、前の様に胸が千切れるほど痛くなることはない。



あたしの中の時間が確実に進んでいたことを感じていた。



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