【完】ヒミツの恋を君と。
今まで突っ立ってた晴が、彼女の顔をゆっくり見る。
そして、彼女の背中に手を──
あたしが見ていられたのはそこまでで、気付けばめいっぱいの早足で廊下を突っ切っていた。
そして、階段を駆け降りようとしたその時、反対に上ってきた誰かとぶつかってしまう。
「ご、ごめんなさい」
「あー俺は大丈夫だよ。君は大丈夫?」
「だ、大丈夫です。失礼します…」
さっきみたシーンが頭をぐるぐる回ってるあたしには、目の前のその人を見上げる余裕もなくて、俯いたままその場から走り去った。
晴と同じ色のラインの入った上履きを履いたその先輩は優しそうな声だった。
この時は、この先輩とこの先、関わる事になるなんてこれっぽちも思っていなかった。
…そして、あたしは知らなかった。
少しずれてる、歯車と歯車がぎこちなく噛み合って回り続けてたことを……。
あたしは気づいてなかった。
晴の心の中にある深くて寂しいその闇に──
そして、彼女の背中に手を──
あたしが見ていられたのはそこまでで、気付けばめいっぱいの早足で廊下を突っ切っていた。
そして、階段を駆け降りようとしたその時、反対に上ってきた誰かとぶつかってしまう。
「ご、ごめんなさい」
「あー俺は大丈夫だよ。君は大丈夫?」
「だ、大丈夫です。失礼します…」
さっきみたシーンが頭をぐるぐる回ってるあたしには、目の前のその人を見上げる余裕もなくて、俯いたままその場から走り去った。
晴と同じ色のラインの入った上履きを履いたその先輩は優しそうな声だった。
この時は、この先輩とこの先、関わる事になるなんてこれっぽちも思っていなかった。
…そして、あたしは知らなかった。
少しずれてる、歯車と歯車がぎこちなく噛み合って回り続けてたことを……。
あたしは気づいてなかった。
晴の心の中にある深くて寂しいその闇に──