【完】ヒミツの恋を君と。
* * *



そこは本当に居心地の悪い異空間。


廊下にいる人達の上履きはみんな紺のライン入りなのに、あたし一人だけえんじのライン。




だからすれ違う先輩達が、「何か用?」と言わんばかりにあたしのをチラチラ振り返る。



あ、3年2組。

晴のクラスの前に着いた。



やっと晴の顔が見れると思ったら、緊張感が一気に和らいでいく。

後ろの入り口から遠慮がちに覗いて、中を見渡すけど、晴はいない。



まだ職員室なのかな?

どうしようかと挙動不審になりかけた時、真後ろから、ふわっと甘い、いい香りがして振り向いた。





「どうしたの?誰かに用?」





振り向いた先には女の先輩が立っていて、彼女のその声と顔を知っていたあたしは息をするのも忘れるほど固まってしまった。


この人……晴の……。




あの日のパソコンルームで見た光景が脳裏に蘇(よみがえ)って、体は固まったままなのに、心臓だけが激しく脈打ち始める。


この人、晴に抱きついた人…。





「どうしたの?誰かに用なら呼んできてあげるよ?」





その声にハッと我に返った。





「あ……いや、えぇっと…」




晴を尋ねてきたとは言えなくて、不自然に口ごもってしまった。



首を傾げてあたしの返事を待つ彼女。

やっぱり綺麗な人だった。



長いストレートの髪はツヤツヤしてて、睫が長くて大きな目。

ニコッと微笑むその口元にはえくぼが出来てる。




顔が似てるわけじゃないけど、彼女の雰囲気は春ちゃんと被る。



優しそうな雰囲気。

男の子にモテる女の子。



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