【完】ヒミツの恋を君と。

大切なものと大切な時間

「いらっしゃいませー!シオリ様、ヒトミ様」


「モカくん今日は元気だねー」


「はいそりゃもう、すこぶる元気です!」





拳を作ってにっこり笑えば、シオリ様とヒトミ様が「かわいい~」って頬を染めてくれる。


ただいま、男バージョン・モカでバイト中のあたし。



あーあ…。

あたしってどうして男に生まれなかったんだろう?


女としてはいまいちパッとしないけど、男として生まれてたら、劣等感なんて抱かずに、楽しい人生を送れたんじゃないかとこんな瞬間思ってしまう。


女心の方が良く分かるしね。



注文をとろうとメニューを差し出すと、ヒトミ様がキョロキョロし始めた。





「あれ?モカくん、そういえば今日はハルくんいないの?」


「知りません」


「え?」


「あんな男のことは知りません」





大きな声でそんなことを言ってのけたあたしに、ヒトミ様とシオリ様はびっくりした様に目をパチパチさせた。
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